先月、なんとなく参加したとある異業種交流会(普通の飲み会のようなもの)で、同い年の女性花子(仮名)と知り合った。
とてもハキハキとしたフレンドリーな人で、すぐに仲良くなって「今度お茶しよう!」ということに。
そして次の週くらいに夜一緒にご飯を食べに行き、そこでも趣味や学生時代の話で盛り上がった。
同じような経験をしていたり、共通点もたくさん見つかって、私は「仲良くなれそうな人と知り合えて良かった!」と本気で思っていたのだ。
花子も純粋な気持ちで私に興味を持ってくれ、「仲良くしたい」と思ってくれているんだろうな、と考えていた。
そう、このときまでは。
MLM/ネットワークビジネスとは?
始めに、MLM(マルチレーベルマーケティンング)/ネットワークビジネスについて簡単に説明しておく。
・人とのつながりを利用した流通業のことで、無店舗で商品を販売するというもの。
・始めるには、会員登録(無料)をしてから商品を購入する。
・自らが商品を売るだけでなく、販売員を勧誘することで、勧誘した販売員の売り上げに対しても報酬が得られる、という仕組み。
・ねずみ講(違法)と一緒にされることが多いが別物で、MLM・ネットワークビジネスは違法ではない。(特定商取引法で厳しく規制がされており、一定の条件を守れば、の話)
ちなみに、これは以前ネットワークビジネスをやっていた知り合いに聞いた情報だが、こんな面もあるらしい。
・手軽にできそうなイメージとは裏腹に、サラリーマン時代の月収を上回れるような人は1割くらい。
・セミナーやミーティング、勧誘など、毎日予定に追われている。
・組織内の「ランク」を上げるために自ら商品を買い続け、大量の在庫を抱えたまま借金だけ残る人もいる。
こういった情報は以前から知っていたので、「私にはMLMは絶対向いていないな」という思いはあった。
これってもしかして、勧誘じゃね?
本題に戻ろう。
「今度お茶しよう!」ということで花子と二人でご飯を食べに行ったときの話だが、いたって普通の会話ばかりしていた。
「学生時代何してた?」
「休日は何してるの?」
「本はよく読むの?」
といったごく平凡なトピックだ。
ただ少し気になっていたのが、花子がめちゃくちゃ私のことを聞いてくる、ということだ。
こちらが自分の話ばかりして申し訳なく思うくらいに色々質問をしてくるのだが、そのときは「私にそんなに興味を持ってくれてるのね!」と素直に嬉しく思っていた。
今思うと悲しい。。
終始楽しく話をし、家路に着いたあとのことだ。
ふと、
「これってもしかして、ネットワークビジネスの勧誘?」
という考えが頭をよぎった。
理由は以下の発言から。
・「本は『金持ち父さん貧乏父さん』がおススメだよ」
・「あるすごい人に出会って人生が変わった」
・「そのすごい人を今度紹介するから会ってみたらいい」
・(やりたいことを聞かれて、細かく答えると)「そのすごい人に相談したらいい」
少しググればわかるが、これらの言葉はMLMをやっている人が勧誘のときに使う常套句らしい。
ああ、あんなに楽しく話して、純粋に仲良くなれるとか思ってたのに勧誘の可能性があるのか、、、とこの時点で少し凹んだ。
しかし、まだ100%そうだと決まったわけではない。決めつけはいけない!
とか考えているところにすぐに連絡がきて、「すごい人と3人でお茶しましょう。いつ空いてますか?」と言われやり取りをし、あっという間に3人で会うことが決まったのだった。
ああこれ、確実に勧誘だわ
今回は待ち合わせの段取りから、すでに何かがおかしかった。
てっきり駅で3人で待ちあわせて、どこかのお店に入るものだと思っていたが、待ち合わせ場所にいたのは花子ひとり。
「あれ、そのすごい人はまだ?」
と聞くと、
「太郎さん(仮名)はまだ時間がかかりそうなので、とりあえずカフェにでも入りましょう」と言われ、近くのカフェへ。
「とりあえずカフェってことは、このあと3人でご飯に行く、って感じでいいのかな?」
花子が「お茶をしましょう」という言葉を使っていたので、念のため確認する。
「いえ、このあともまたお茶に行く感じです」
「ふ、ふーん」
なんだかよくわからないけど、つっこむのも面倒くさくなってきたので流すことに。
席について、花子と雑談。この間も、彼女は「ぶきっちょさんは何がやりたいんでしたっけ?」「どうしてそれがやりたいんですか?」とか色々聞いてきた。
40分ほどして、「太郎さんはまだ来ないの?」と聞くと、「あ、じゃあそろそろ行きますか」と言って花子は立ち上がり、「上の階で仕事してるんですよ」と言いだす。
「え?そうなの?じゃあ最初からいたの?」
「忙しい人なので。。あまり長い時間は話せないとは思います」
「ふ、ふーん」
このあたりから、私のテンションがなんだかおかしくなってきた。
よくわからない変な状況にいると、妙にハイになってきてしまうのだ。オラ、なんだかワクワクするぞ!というあれである。
一方で、勧誘ってどんな風にされるのだろう?怖い感じだったら逃げたいな、などと、とにかく色々考えていた。
いよいよ先輩会員、太郎登場!
MLM勧誘では、まず二人で会う→自分の直上の会員に会わせる→セミナー等勧誘、みたいな流れが多いらしい。
つまり太郎は、花子の先輩会員というわけだ。
上の階にあるカフェに行くと、中央あたりにパソコンを開いて座っている男性が。
パリッとした高級そうなスーツに身を包み……というわけではなく、至ってカジュアルな服装の芸人みたいな男性がそこにいた。つまり、親しみやすい。
「こんにちはー」と言いながら着席。
着席早々、花子が私の人生の目標やら夢について太郎に話し出す。
おい、なぜ君がそんなに勝手にベラベラと人の夢を話すんだ。しかも会って数分しか経っていない太郎に。
と若干不快に思いながら、何の会合だこれ、と客観的にみると可笑しくもなった。
後でわかったことだが、どうやらこの会合は通常15分~30分そこらで終わるらしい。その短時間で、会員になりそうかなりそうじゃないかを見極める、ということのようだ。
なので花子は、早口に私の情報を太郎に流したのだろう。
その流れで、私は太郎に「何をやられてる方なんですか?」と聞いた。さっき花子にも聞いたが、あいまいな回答しか得られていなかったからだ。
すると、「流通業です。海外にある会社と契約して、個人事業主としてやっています」と答えた。ああ、やっぱり。やばい。勧誘されてしまう。ちゃんと断れるかな?どきどき。
そして、太郎のターン。
「ぶきっちょさんはやりたいことがあるんですね。でも、それをやったその先のこととかって、考えてますか?」という質問から始まり、
「話を聞いていると『好きだからやりたい』『とりあえずやりたい』っていう感じが強いように聞こえますね。それでビジネスとして成り立つかって、考えたことあります?」となり、
「結果を出すには、相当な努力が必要となるものなんですよ」と当たり前のことを力説し出した。
私はなぜ会って数分しか経たない初対面の男にこんなに上から目線で説教されているんだろう?と思いながら、そのすべてに反論してみた。
してみた、というか、本当に私が考えていることを素直に話したら、結果的に反論する形になっていただけだが。
「感情が先にくるのは良くない、という風に言ってましたが、『好きだからやりたい』という気持ちが一番大事だと思うんです」という感じで、こちらも熱弁をふるう。
気づいた時には、横に座っていた花子がたいそう不機嫌な表情になっており、
「こんなに価値観が違うなんて信じられない…」みたいなことを呟いた。
しまいには頭を抱えてコダックのようになり、まるで戦場を見てきた人のような顔つきになっていた。
その顔からは、さっきまでの好意はもはや全く感じられなかった。
途中で太郎もそんな花子と素早くアイコンタクトを取り、
「そろそろ時間が…。今日は価値観が違う人と話せて楽しかったです」と引きつった表情で唐突に告げた。
結局そのシラケた雰囲気のままお開きとなったのだが、帰り道でふと気づく。
あれ、勧誘されてない。
MLMをやっている人の特徴
今回なんとなく掴んだ彼らの特徴をメモしておく。
全員がそう、というわけではないと思うが、結構な確率で当たるんじゃないか、と思っている。
①ルームシェアをしている
MLM仲間と住んでいることが多い。みんなで近くに住むことで、すぐに集まれるようにしているらしい。
②遊びに誘うとき「お茶しよう」と言う
飲みに行こう、とか、ご飯食べよう、とかではなく「お茶しよう」。勧誘の経費を抑えるためらしい。
③「すごい人がこう言っていた」「こうした方がいいと言っていた、だからやっている」とか言う
これは私が感じただけだが、「すごい人がそう言ったのはわかったけど、自分の考えは何なの?」と思う場面がいくつかあった。上の人を尊敬していて、素直にその人の言う通りに色々やっている、という印象を受けた。
感想
仲良くなれると思った人が、勧誘目的だったのはやはり悲しかった(まあ、結局されてないけど)。もう会うことはないんだろうな。。
ただ、久しぶりに全く違う価値観の人と出会って、軽いディスカッションみたいなことができたのはすごく楽しかった。ついいつも似た価値観を持つ友人や知り合いと遊ぶので、こういうのは滅多にない良い機会だったと思う。
それにしても、価値観の違いを知った後のあの態度の変化は一体何でなのだろう。
私はMLMを真面目に頑張って、それで成功してお金持ちになりたい!という価値観を持っている人はそれでいいと思うし、「どちらが正しい」とかはないと思っている。
私はお金は最低限あれば良くて、その分ゆるく、心豊かに生きていく方法を探している途中だ。
どんな生き方だって、本人やその周りが幸せだと感じるならいいのではないだろうか。